東京研修 (2025年9月26日~27日)
本学科は9月26日(金)から27日(土)にかけて東京研修を実施しました。
XR(Extended Reality)分野の最前線に立つ企業、そして、ゲームではマリオテニスを代表とする有名タイトルを作成している企業を訪問し、現場で活躍する卒業生とも意見交換を行う二日間。技術と体験設計、そして人材育成のリアルに触れる濃密な機会となりました。
初日は株式会社ハシラスを訪問しました。
同社はXR開発で国内外から注目を集める存在で、単なる技術紹介にとどまらず、「体験」を出発点に逆算して設計を組み上げる姿勢が一貫しているのが印象的でした。取締役社長である元マジシャンの経歴をもつ安藤晃弘氏からは、観客(ユーザー)の感覚をどう捉え、どの順序で驚きや没入を組み立てるかという発想が語られました。長時間の利用を前提にしたVR酔い対策や、XRの次のステージを見据えたシステム思考も共有され、技術選定の一つひとつが「人を楽しませる」ための手段であることが明確に示していただきました。学生からは「面白さを先に決め、技術はその後に最適化する」というプロセスに強い関心が寄せられ、メモを取る手が止まらない様子が見られた。
二日目の午前は株式会社日本XRセンターで、6人協力プレイのXRゲーム「ZombieStorm」を体験しました。
四方から迫る敵に合わせて役割分担と声掛けが自然と生まれ、緊張と熱狂が同居する時間となりました。ハードとソフトの両面で快適性が丁寧に作り込まれており、酔い対策を含む安全面の設計も確認できたのは教育的な意味でも大きいと感じました。取締役社長の小林大河氏からは、海外との連携を視野に入れた開発体制や、挑戦を前提に進化していく企業文化について言及があり、XRを「技術の集合」で終わらせないための視点が示された。体験後、学生の多くが「没入はハード性能だけでなく体験設計力から生まれる」という気づきを得られたのも印象的です。
午後は株式会社キャメロットを訪問しました。
コンシューマからモバイルまで幅広くタイトルを送り出してきた同社では、開発部部長の宇野正明氏(本校教師の恩師)から、将来設計に直結する論理的な助言を数多く頂きました。自分の得意分野を言語化して磨くこと、ユーザー起点の意思決定を習慣化すること、チーム開発での責任と信頼を日々積み上げること、そして学生のうちに小さく挑戦し、失敗から学ぶことの重要性が具体例とともに説明された。「作品は作り手の都合ではなく、受け手の体験のために存在する」という原則は、講義で学ぶ理論を現場の温度で再確認させる内容でした。
夜には卒業生5名との交流会を行いました。
当初予定していた会場が手配の行き違いで使用できず、急遽別会場での実施となりましたが、雰囲気は終始なごやかで、現場のリアルが垣間見える時間となりました。契約上の守秘義務から関与タイトル名の公表は控えられたものの、第一線での経験に裏打ちされた就職活動のポイント、ポートフォリオの見せ方、現場で求められる姿勢、失敗とその乗り越え方など、実践的な話題が惜しみなく共有してくれました。世代を越えた率直なアドバイスは、学生の不安を行動へと変える力をもっていました。
二日間を通じて見えてきた共通項は明快です。どの現場も、体験価値を最優先に据えて意思決定を行い、技術はその価値を最大化するために選び抜かれている。没入、快適性、安全性、そして楽しさ——それらは偶然に成立するのではなく、緻密な設計と検証の積み重ねから生まれています。
今回の研修は、学生にとって“現場の基準”を肌で確かめ、自らの制作に持ち帰るための確かな羅針盤となったと思います。
末筆ながら、丁寧にご対応くださった株式会社ハシラス、株式会社日本XRセンター、株式会社キャメロットの皆様、さらに多忙のなか時間を割いてくれた卒業生の皆さんに深く感謝申し上げます。
本学科は今後も産学連携を通じ、最新技術と実務知の双方を学べる機会を継続的に提供し、業界に貢献できる人材育成を一層推進していきたいと思います。